四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の放射性物質漏えい事故に備え、伊方町と県は23日、甲状腺被ばくを抑えるとされる安定ヨウ素剤で、乳幼児が服用できるゼリー状薬剤の事前配布を始めた。伊方原発から半径5キロ圏内に住む3歳未満児77人が対象で、説明会に出席した48人の保護者が受け取った。
 東京電力福島第1原発事故後に改定された国の原子力災害対策指針に基づくヨウ素剤の事前配布は、これまで原発半径5キロ圏内に居住する3歳以上が対象。乳幼児向けに事前配布できる薬剤はなく、事故時に薬剤師が粉末剤をシロップに溶かして服用させる計画だった。しかし、緊急時の迅速な対応に懸念があることから、今秋以降にゼリー状の薬剤を事前配布するよう国が決めていた。
 伊方町湊浦の町中央公民館で23日に説明会があり、保護者が医師や保健師から使用上の注意や保管方法の説明を受け、乳幼児でも服用できるゼリー状ヨウ素剤を受け取った。1歳の子どもと一緒に訪れた近くの主婦(30)は「最近、熊本や鳥取県中部で大地震が頻発し、心配もある。万一の備えとして事前配布で安心感が増す」と話していた。
 町によると、今回配布できていない対象者には健診時などに対応する。
 伊方町では2014年から3歳以上の対象者にヨウ素剤を事前配布。9月1日現在の配布率は76.6%になっている。